一条工務店の蓄電池、劣化を独自試算してみた。実データによると3年間で劣化は1%!?
こんにちは@・ェ・)めー。
わが家は一条工務店でお家を建てました。このお家の大きな特徴として太陽光パネルが13.475kW、そして蓄電池が12.4kWhの実効容量という一般の家庭にしては大きめの蓄電池を取り付けています。
蓄電池は特に高価な住宅設備なので20年…できれば30年くらい壊れずに使いたいですね。でも一体どれくらい普通に使えるのでしょうか。この記事では蓄電池の劣化について独自に試算してみました。
蓄電池の劣化を「容量 vs. 利用率 vs. 時間」の三軸で示しつつ、理論値とHEMSから取得した実測値の比較検証を行うという意欲的な記事になっています。長くて専門的な話も出てきますが価値のある内容になるように頑張りました。
一条工務店は蓄電池1台と2台どちらがいいの?
3年経過した蓄電池2台の劣化を検証
独自の試算で3年経過後の劣化は1.87%(使用可能容量は98.13%)
HomeAssistantで取得した実測では1%(使用可能容量は99%)でした
2台設置することで1台よりも蓄電池の劣化が抑えられ、長く実用的に使える可能性が高いです

一条工務店でお家を建てるなら
蓄電池は2台がオススメという結論になりました

がんばって毎月の数値を記録して試算して
蓄電池から実データも取得した結果だ
さっそく結論ですが一条工務店でお家を建てるなら蓄電池は2台がオススメです。
その理由として単純に1台では容量が不足していること、2台の方が劣化が少なく長期間使える可能性が高いということです。
この記事で分かること

長めの記事なので要点はこちらですー
✅ 蓄電池を長持ちさせるための「蓄電池利用率」という考え方
✅ 蓄電池の劣化を自分で試算する方法(計算式を公開)
✅ 蓄電池1台と2台で劣化速度がどう変わるかの比較シミュレーション
✅ 3年間使用した蓄電池の実際の残存率(HomeAssistant実測値)
✅ 試算より実測の方が良好な理由(LFP電池の非線形劣化とバッファ容量)
蓄電池について
蓄電池の劣化は避けて通れない
まずは蓄電池の基礎についてです。
スマホを使えば使うほど電池持ちが悪くなるように原理的に電池は充電と放電を繰り返すと使える容量が減るという劣化が発生します。
一条工務店の初代蓄電池はダイヤゼブラ製のEIBS7という蓄電池を採用しています。リン酸鉄リチウムイオンという劣化に強い正極材で作られていることが特徴で、製品保証は15年で60%の容量を保証しています。これを逆算すると年間の劣化率3.35%のときに15年後経過すると容量が60%に減った場合は保証に抵触することを意味します。
実際の運用における蓄電池の劣化率については長期間使用されているデータがまだ少ないため正確な値が分かりません。そこで、この記事では独自に実運用データから劣化の試算を行います。
保証についてはこのように記載されています。
製品機能と蓄電容量を標準で15年の保証期間を設定しています。日々安心してご使用いただけます。
蓄電可能容量(初期の60%)が保証の対象です。
https://www.enetelus.jp/eibs7/support/index.html
蓄電可能容量ということは実効容量であり1台の時は6.2kWh、2台の時は12.4kWhですね。これが15年後に3.72kWh、7.44kWhまで使えるのを保証するよ、と解釈しました。

2026年頃から2代目の蓄電池が登場すると思われます
わが家の初代蓄電池について記載しますが、考え方は一緒です
実運用データの取得
パワーモニターと指標の計算
次に蓄電池に関する実際のデータを取得します。
一条工務店からパワーモニターというアプリが提供されています。このアプリを使うと太陽光発電の発電、電力会社からの買電・売電、蓄電池への充電・放電、消費電力という6個のデータを取得することができます。
このデータを元に太陽光発電や蓄電池に関する様々な指標を計算することができます。
実際に月ごとのデータを元に分析した年間まとめ記事はこちら。この記事と合わせて見ていただけると嬉しいです。
蓄電池利用率の算出

蓄電池を活用できているかを判断する指標
蓄電池利用率というものを計算する
まずは蓄電池をどれくらい有効活用しているかを調べます。家庭によって電気を使う時間帯や使用量が異なり、蓄電池の使い方も変わってきますね。
そこでこの記事では独自の蓄電池利用率というものを算出します。
これは1日の間に蓄電池の残量が0%から100%まで充電され0%まで使い切る1サイクルができたら100%とする指標です。
たとえば冷暖房の不要な季節は蓄電池の残量には余裕があって50%、夏冬は夜もエアコンを付けるので85%といった感じの数値になります。
- 蓄電池利用率
- 放電/(実効容量*その月の日数) 【1日1サイクルを100%とした1か月の利用率】
蓄電池の利用率が高いということは蓄電池の容量を無駄なく有効に使えているので費用回収までの期間が短くなります。逆に利用率が低いと容量に余裕があるため費用回収までの期間は長くなってしまいます。
蓄電池の利用率は高い方が良さそうに見えますが極端に高すぎると、それは蓄電池の容量が不足していることになってしまいます。個人的には75%から85%が費用回収効率を重視した際のちょうど良い利用率かなと思います。
でも利用率が低い場合に見逃すことができない大きなメリットがあります。それは蓄電池の劣化速度が遅いということです。
| 利用率 | 状態 |
|---|---|
| 90%以上 | 容量不足。夜間にすぐ電池切れになってしまう |
| 75〜85% | 電気代の回収効率が良い。劣化ペースも許容範囲内 |
| 60〜75% | 蓄電池容量に余裕あり。蓄電池の劣化が抑えられる |
| 50%未満 | 蓄電池容量が過剰。災害対策が最重要ならアリ |
わが家の場合は蓄電池2台で約63%で、劣化を抑えて長期間稼働する戦略に当てはまります。
劣化の理論値を試算する
劣化試算の前提と仮定
前述の通りEIBS7の製品保証は15年の製品機能および蓄電可能容量の60%以上を保証するものなので、逆算すると年間の劣化率3.35%のときに15年後で保証に抵触する60%の容量に減ることになります。
EIBS7の運転モードには1日2回の充放電を行うスマートモードというものが存在します。先ほどの劣化率3.35%は「スマートモードで1日2回100%の充放電の運用した場合の劣化率が3%で、蓄電池の個体差や設置環境による負荷の変動、時間経過で劣化するカレンダー劣化など0.35%のバッファを加えたもの」ではないかと予想しています。
サイクル数の観点で見てもEIBS7の公称サイクル寿命は12,000サイクルなので年間730サイクルの使用を想定すると16.4年で到達することから、1日2サイクルで15年を前提に設計されていると推測されます。
しかしながら実際にスマートモードで運用しているケースはほとんどなく太陽光発電で充電を行う節エネモードが大半と思われます。その理由として引き渡し時に節エネモードになっていることと、わざわざ深夜電力を購入して充電するよりも太陽光の発電のみで充電した方が経済合理性が高いからです。
スマートモード以外は1日1回の充放電を行うので3%の半分の1.5%を基準劣化率とします。
この1.5%という基準劣化率は上記の通り公開情報から私が推定した値なので、実態とは異なる可能性があることをご了承くださいませ。

基準劣化率1.5%は「保証を超えない範囲の最大劣化率」から算出した
保守的な値なので、実際の劣化はこれより緩やかの可能性が高いです
この基準劣化率は毎日100%の充放電を繰り返した場合を想定したものですが、実際の運用では蓄電池を100%使い切らない日がほとんどです。ここで先ほど算出した蓄電池利用率の出番です。基準劣化率に蓄電池の利用率をかけることで実運用に合わせた、想定劣化率を算出します。
家庭によって蓄電池の利用状況が異なるため、この想定劣化率を算出することで個々の家庭に合った劣化率が算出できるというわけです。
わが家の3年間のデータはこんな感じの結果になりました。
| 年 | 実効容量 | 年間放電量 | 蓄電池利用率 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2023年 | 6.2kWh | 2,000kWh | 88.38% | 蓄電池1台の想定値 |
| 2024年 | 12.4kWh | 2,823kWh | 62.14% | 全期間蓄電池2台の実績値 |
| 2025年 | 12.4kWh | 2,846kWh | 62.88% | 全期間蓄電池2台の実績値 |
※2023年の6月に蓄電池の2台目増設を行っています。2023年1月から6月までの放電量が993kWhのため、約2倍した数値の2000kWhを蓄電池が1台の年間放電量の想定値としています。
わが家は蓄電池利用率は蓄電池が1台のときは2,000kWh/(6.2kWh*365日)*100=88.38%、蓄電池が2台のときは2,846kWh/(12.4kWh*365日)*100=62.88%になりました。
これをもとに想定劣化率は蓄電池が1台:1.5*88.38%=1.3257%、蓄電池が2台:1.5*62.88%=0.9432%とします。
両者には比較的差があるように見えますので、経過年数ごとの劣化の違いを試算します。
なお、年間の放電量は蓄電池の劣化によって減少すると考えています。これは実効容量の低下に伴って放電量も低下ことに由来します。
劣化で容量が減ると「貯められる上限・出せる上限」が物理的に狭まるため、結果として年間放電量(蓄電池が担える電気量)も強制的に目減りしていきます。
この試算では0.5%ずつ減少していくことを想定します。
わが家の蓄電池は太陽光で発電した電気だけで充電する節エネモードで動いています。エネルギーの供給源である太陽光パネルの発電量が年0.5%減っていく以上、蓄電池に充電できる量(=夜に放電できる量)も連動して強制的に目減りしていくという因果関係があります。
放電量の減少は主に太陽光パネルの出力低下を反映して0.5%と設定しました。
- 想定劣化率
- 基準劣化率(1.5%)*蓄電池使用率 【家庭ごとの実効容量の低下する割合】
試算結果
1〜5年と10年後、保証期間である15年後、おそらく使えるであろう20年後、ここまで使えたらいいなの25年後を記載します。
蓄電池1台(実効容量6.2kWh、利用率88.38%)の場合
| 経過年数 | 実効容量(kWh) | 残存率(%) | 放電量(kWh) | 蓄電池利用率(%) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 6.20 | 100% | 2000 | 88.30% |
| 2 | 6.11 | 98.67% | 1990 | 89.12% |
| 3 | 6.03 | 97.36% | 1980 | 89.89% |
| 4 | 5.94 | 96.04% | 1970 | 90.65% |
| 5 | 5.86 | 94.74% | 1960 | 91.44% |
| 10 | 5.45 | 88.30% | 1902 | 95.67% |
| 15 | 5.07 | 82.03% | 1855 | 100.44% |
| 20 | 4.70 | 75.91% | 1809 | 105.84% |
| 25 | 4.35 | 69.95% | 1773 | 112.03% |
蓄電池2台(実効容量12.4kWh、利用率62.88%)の場合
| 経過年数 | 実効容量(kWh) | 残存率(%) | 放電量(kWh) | 蓄電池利用率(%) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 12.40 | 100% | 2846 | 62.88% |
| 2 | 12.28 | 99.06% | 2832 | 63.16% |
| 3 | 12.17 | 98.12% | 2818 | 63.45% |
| 4 | 12.05 | 97.18% | 2804 | 63.74% |
| 5 | 11.94 | 96.26% | 2790 | 64.03% |
| 10 | 11.37 | 91.68% | 2720 | 65.56% |
| 15 | 10.81 | 87.22% | 2653 | 67.21% |
| 20 | 10.28 | 82.86% | 2587 | 68.99% |
| 25 | 9.75 | 78.62% | 2523 | 70.92% |
考察その1:劣化による実効容量の減少
試算結果の表をざっくりまとめると以下の通りです。
- 15年後、25年後の蓄電池はどうなっている?
- 蓄電池が1台の場合、15年後の残存率は81.43%で実効容量は5.05kWh、25年後は69.32%で4.30kWh
蓄電池が2台の場合、15年後の残存率は87.08%で実効容量は10.80kWh、25年後は78.08%で9.68kWh
蓄電池が1台の方が蓄電池利用率が高いため残存率が少ないという具体的な数値がでました。今回の試算では15年後に5.65%の差がでるという結果になります。
今回の試算は利用率に比例して劣化が進むという線形モデルの保守的で厳しめな計算で行っています。ですが実際の劣化は後述する非線形で2台の方がゆっくりと進行します。
25年後に9.68kWh残るという試算結果は実は控えめな数字であり、実際にはもっと劣化せず元気な状態を保ち1台との差が広がっている可能性が高いと考えています。
考察その2:蓄電池利用率の上昇
蓄電池の劣化によって実効容量が低下することで、必然的に蓄電池の利用率が上昇していきます。
特に蓄電池が1台の場合は運用開始時点で利用率が88.30%と高い数値であるため、年間1%未満の上昇であっても5年程度で90%、そして15年後に100%へ到達する結果となりました。
100%に近いということは毎日充電を0%まで使い切ることになります。蓄電池でカバーしきれないため、夜間の買電が増えていくことを意味します。
蓄電池を節エネモードで動かしている限りは蓄電池利用率は100%を超えませんが、常に容量がギリギリで余裕ゼロになってしまいます。
ただし、前述の通り厳しめな計算なのでもっと穏やかな上昇になる可能性は高いです。
考察その3:災害対策と実用性
わが家の2026年1月の放電量がちょうど300kWhでした。平均すると1日あたり9.68kWhの放電量、冬に電気の自給自足を目指す場合は10kWh弱が目安になります。
保証期間である15年後に実効容量が10kWh以上残っていることは1つの安心材料となるのではないでしょうか。
災害はいつ起きるか分かりません。いざ災害や停電が起きたときは普段よりも節電するとはいえ、十分な蓄電池の容量があるというのは災害対策として見逃せないと思います。
グラフで表すとこんな感じです。
あなたの蓄電池の劣化を試算してみよう
ここまではわが家のデータで試算しましたが、計算式はとても単純ですので誰でも簡単に計算することができます。
気になる方は試してみてくださいね。
- パワーモニターで年間の放電量を確認 → ○○kWh
- 蓄電池の実効容量を確認 → ○○kWh
- 蓄電池利用率を計算 → 放電量 ÷ (実効容量 × 365) × 100 = ○○%
- 想定劣化率を計算 → 1.5% × 蓄電池利用率 = ○○%/年
年間放電量2,500kWh、実効容量12.4kWhの場合
蓄電池利用率 = 2,500 ÷ (12.4 × 365) × 100 = 55.2%
想定劣化率 = 1.5% × 55.2% = 0.83%/年
→ 15年後の残存容量 ≈ 87.5%
ここまでは独自の試算を行いました。
では、実際の蓄電池に聞いてみたらどうなるのでしょうか。
後半のセクションではHomeAssistantを使って実測値を取得して試算と照らし合わせて検証します。

蓄電池から劣化に関する情報を取ることに成功しました
実際に稼働している機器のセンサーデータです
HomeAssistantを使った実測値の取得
さてさて、ここまではあくまで私が独自に考えた試算結果でした。この試算に対して実際に稼働している蓄電池のデータを取得することでさらに現実的な検証が可能になります。
EIBS7はHEMSに対応しているので専用の機材を通じて色々なデータを取得することができます。
わが家は設計の時点でHEMSのオプションを入れていませんでした。そのため一条工務店のHEMS機器は設置されていません。実はこの状態でもパワコンと通信して太陽光パネルと蓄電池から直接データを取得することができます。
HEMSは決められたECHONET Liteという通信の規則に則って、その規格に対応している家庭内の機器と通信を行う機材です。
一条工務店のHEMS機器でなくてもECHONET Liteに対応している何かであれば太陽光パネルや蓄電池と通信可能です。今回はHomeAssistantというソフトウェアがHEMSの代わりにECHONET Liteの通信を行うという仕組みになっています。詳しいセットアップは省略しますが割と簡単にできます。

HEMSオプションがなくてもHomeAssistantから
データを取得する方法は別記事を予定している
さてさて、HomeAssistantを導入してデータを取得すると一条工務店が提供しているパワーモニターというアプリからは見えないセンサーデータを直接取得することができます。その1つが蓄電池のSOH(State Of Health)、残存率です。
文字通り蓄電池の実効容量の残っている率、たとえば劣化率1%で1年経過したら残存率は99%、といった感じです。
- 残存率(%)
- 蓄電池の健康状態を表し、新品時の容量を100%とした現在の最大充電能力です
State Of HealthなのでSOHと略されます
わが家の蓄電池は住み始めてまる3年経過した時点で残存率が99%という結果になりました。

試算では3年経過すると残存率は97.18%という見込みであることと、何より3年間で劣化が1%しかないのはちょっと少な過ぎではないかなと思ったので詳しくリサーチしてみました。
HomeAssistantから取得したSOHの注意点
SOHは1%単位のデータなので実際には98.5%〜99.4%のどこかにいます。
100%から99%に変わった日は不明なので、長期間100%だった可能性があります。まだ1%の変動しか捉えていませんので、残存率については継続的に見ていき更新があったら追記しますね。
LFP電池の非線形劣化

ちょっと専門的な話がはじまります
蓄電池の劣化を決める最大の要因はDoD(Depth of Discharge:放電深度)です。
放電深度とは1回の充放電でバッテリーを100%全部使用するかを表しています。100%まで充電して0%になるまで使い切る(DoD 100%)」という過酷な使い方をするか、80%から30%の間で浅く使う(DoD 50%)という優しい使い方をするかで、蓄電池の寿命は劇的に変わります。
そして重要なのはリン酸鉄リチウムイオン電池(LFP電池)の化学特性は、放電深度を浅くすると寿命は比例ではなく『指数関数的(非線形)』に延びるという性質の疲労曲線を持っているということです。
一般的なLFP電池の特性として、DoD100%での寿命が4,000サイクルだとすると、DoD50%で浅く使った場合の寿命は単純な2倍の8,000サイクルではなく、10,000サイクル以上に延びると言われています。
| 放電深度(DoD) | サイクル寿命の目安 | DoD100%比 |
|---|---|---|
| 100% | 3,000〜4,000サイクル | 1倍 |
| 80% | 5,000〜6,000サイクル | 1.5倍 |
| 50% | 8,000〜10,000サイクル | 2.5倍以上 |
この表は一般的なLFP電池の傾向です。EIBS7と直接比較はできませんが、重要なのは「浅く使うほど寿命が比例以上に延びる」という非線形の性質です。蓄電池を2台にすることでバッテリーを0%になるまで使い切るという日は激減します。
仮に同じ放電量であっても蓄電池の容量が大きい・蓄電池2台で利用率を下げることは、この非線形の特性を生かしてバッテリーの寿命を大幅に伸ばせる可能性があるということです。

身近なところではスマホの充電も80%を上限にする設定がある
これと同じ原理で寿命を延ばしている
メーカーが隠し持つ「見えないバッファ容量」
一条工務店の蓄電池に限らず、蓄電池メーカーはカタログスペックの実効容量を満たすために物理的なバッテリーセルを少し多めに積んでいることが多いです。定格容量と実効容量の2つが明記されている場合がそれに該当します。
これは規格で決まっていてJIS C 8715-2(産業用リチウム二次電池の単電池及び電池システム)などの試験規格において、蓄電池には「定格容量(物理的なセル容量)」と、パワコンが過充電・過放電を防ぐために使用範囲を制限した「実効容量(ユーザーが使える容量)」が存在することが明記されています。
最初の数年は、この実効容量と定格容量の間の領域:見えないバッファ部分が劣化を引き受けてくれるためパワコンが認識する実効容量・残存率「長期間100%や99%に張り付いたままになる」という現象が起きます。
定格容量と実効容量の2つが用意されている理由は複数ありますが、その1つにLFP電池の特性を考慮していると考えられます。具体的にはLFP電池は最初の充電時に負極表面に「SEI(固体電解質界面)被膜」が形成されます。この皮膜は電池の安定動作に不可欠ですが、形成時にリチウムイオン不可逆的に消費されるため、ごく僅かな容量低下が発生します。
SEI皮膜は初期にほぼ形成されますが、その後も緩やかに成長を続けて最初の数百サイクルで合計数%の容量低下(初期劣化)が生じます。その後は被膜が安定して電極を保護し、長期間にわたる安定期に入ります。
この初期劣化をバッファが受け持つことで、初年度に比べて使える容量が一気に減ったというクレームを防止する意図があると考えています。
蓄電池長期運用の考察と感想
理論的には1台よりも2台の方が劣化が抑えられるからオススメ。ただし実際の残存率は99%なので継続的な検証が必要、という感じになりました。
4年目以降や残存率が更新されたタイミングでこの記事もアップデートしていこうと思います。
「蓄電池の劣化」という住宅用蓄電池ユーザーが不安に感じながらも定量的な情報が極めて少ないテーマに挑んでみました。
試算だけで終わらせずHomeAssistantから取得した実際の残存率のデータと突き合わせて理論と実測の乖離を検証し、その理由を科学的に考察するという…なぜかお仕事っぽいことを趣味で書きました。
施主も工務店も蓄電池メーカーもここまで記載している例はたぶん無いでしょう。がんばった。えらい。

ヒツジさんは電気を買わない遊びに興じてます








